キラッと父さん



 テーブルの上。
 娘のパンツ一枚。
 深刻な面持ちの中年両親。
 改めて驚愕の呻きを漏らす父親。

  「こんなものが・・・二万円?」

 大きく頷く母親。 

  「値札の下に"使用済"って。信じられる?」

  「・・・二万円」

 うわ言のように呟く父親。
 かまわず続ける母親。

  「間違いないわ。静香のよ。こないだバーゲンでまとめ買いした十枚千円のやつ」

  「・・・パンツ一枚が」

  「こっそり後をつけていったら、あろうことか自分の下着売ってお小遣い稼いでたなんて・・・」

  「・・・二万円」

  「しかもあんないかがわしい店で! ・・・親に内緒で!」

 いかにも汚らわしそうに吐き捨てる母親。
 が、返ってくるのは上の空の呟きばかり。

  「パンツ一枚が・・・二万円」 

  「ちょっとぉ!! 聞いてるの?!」

 はっと我に返った父親。
 あたふたと威厳を取り繕い、ゴホッと咳払いして一言。
  
  「静香を呼びなさい」

  「それがまだ帰ってないの。最近は塾にも・・・」

 それでも二階の娘の部屋に駆け上がっていく父親。
 でも、なかなか降りてこないので様子を見にいく母親。
 そこで彼女が眼にしたのは、娘の部屋を夢中で引っ掻き回している夫の姿であった。

  「何してるの?」

  「あ・・・いや・・・」

 その両腕には抱えきれないほどの娘のパンツの山。
 そんな夫に、眉をヒクヒクさせて詰め寄る妻。
    
  「それ・・・どうするつもり?」

  「いや・・・その・・・」
 
 
 
  ガラガラガッシャーン!!

 窓を突き破り屋根から転げ落ちてくる父親。
   
  「どしたの? お父さん」

 怪訝そうに上から覗き込む娘。
 夜遊びからちょうど帰宅したところ。
 青アザに顔をしかめ、イタタと立ち上がりながらも事情を話す父親。

  「ばっかみたい」

 とたんにケラケラ笑い出す娘。
 
  「そんな洗い立ての下着なんか、誰も買ってくれるわけないじゃない」
 
  「・・・そっかぁ!!」

 ハッとひらめく父親。
  
  「じゃあ・・・」

 そう呟くや、ダッと玄関から家の中に駆け込んでゆく。

  「まとめて持って行って、静香にその場で全部穿き替えさせればいいんじゃないか!? 母さん!」






  「あ・・・」

 デート帰りのカップル。
 道端でふと立ち止まり、見上げる夜空。  
 
  「・・・流れ星」

 二人してほうっとため息。

  「でもなんか・・・聞こえなかった?」

  「・・・悲鳴? ・・・人の?」

  「気のせいかな」

  「そうね・・・気のせい」

 そしてカップルは、また仲良く手を繋いで夜のしじまに消えていった。