商売6
「やったぁーー!! 優勝や!!」
「・・・」
「ついにやりよりましたな! 阪神タイガース!」
「・・・」
「あれっ・・・どないしたんです? 兄貴」
「・・・」
「泣いてはるんでっか?」
「アホ! ・・・はしゃいで川に飛び込むだけが阪神ファンやない」
「そうでんな・・・長かったですもんね」
「どアホ! ワレのような俄か阪神ファンに何が分かる。苦節・・・」
「十八年でっか」
「そや。あんなんカスや恥さらしやと言われ続けて十八年、ワシがどんな思いでこの日を・・・」
「ホンマ、どうしようもないチームやったですもんね。どうあがいても優勝できんようにチームを作り上げとるとしか思えんような」
「そや。草野球でもせんようなエラーで試合は落とす」
「そうそう」
「ド下手なくせにゆうこときかん」
「そうそう」
「おまけに消化試合なんぞでホームラン打っては契約でごねる」
「最悪でんな」
「そやけどな、そんなどうしようもないチームほどファンにとっては可愛いもんや」
「さよか」
「出来の悪いドラ息子みたいなもんや。そんなヤツほど情が募るんや」
「はぁー・・・そんなもんでっか」
「ぼけっ!! ワレのことも言うてるのが分からんか?」
「あ・・・すんまへん」
「まぁええ・・・優勝と決まれば、さっそく大阪に帰るでぇ!」
「経済効果6300億円のオコボレにあずかろうって訳でんな」
「・・・なんやター公、今日はさえてんな」
「へっへっへっ、自分もダメ虎のままやおまへんでぇ。まぁこれ見てください」
「こ・・・これは!」
「こないだ駐車場からガメてきたやつです」
「・・・」
「もともと車体が黄色やったから。ね? こうして黒の縞模様入れただけで・・・その名もズバリ"猛虎号"ですわ。どないです?」
「・・・」
「自分も兄貴にはこれまで迷惑かけっぱなしやったから」
「・・・」
「でも、これで大阪に乗り込んだら本場の阪神ファンも目ぇ剥きよりまんで」
「・・・」
「ほんでまた大阪でブイブイいわしたりまひょ。ね? 二人して」
「・・・」
「あれっ・・・どないしたんです? 兄貴」
「・・・」
「また泣いてはるん『じゃかぁし!! ・・・め、目にゴミが入っただけじゃ」
「はいはい。ほんじゃま、はよ乗ってください。・・・行きまっせ。目指すは聖地、大阪へ!!」
その日の深夜。
都内荒川の下流に変な縞模様の車が浮かんでいるのが発見された。
運転を誤り橋の欄干を突き破ってそのまま川にダイブしたものであった。
車に乗っていた二人は幸い無事救助されたが、車窃盗と無免許運転の疑いでその場で逮捕されたそうな。