商売7
「兄貴ィ、今度はナニ始めるんでっか?」
「振り込め詐欺や」
「ああアレ・・・でももう、あんまし引っかからんのやおまへんか?」
「そない思うか」
「はぁ・・・あれだけド派手にニュースやなんやで報道されると・・・」
「まぁな。そやけどどこにでもアホはおるもんや。自分だけは引っかからん思てるアホがまだまだ仰山いてる」
「そんなもんでっか」
「そや。それに逆境こそ詐欺師の腕の見せ所や」
「逆境ゆうたら友達みたいなもんですもんねわしら」
「あほっ! 自慢げに言うな」(と紙の束を手渡す)
「・・・なんです?コレ」
「見て分からんか? 脚本や」
「脚本て・・・」
「そこに書かれてあるとおりの役者になってカモを信じ込ますんや」
「・・・せやけど分厚いでんなぁ。何ページあるんです?」
「ざっと300ページ。台詞にして13000行や」
「13000ぎょう!? ソレ全部わしが覚えるんでっか?」
「そやない。他の役者と分担するんや。もう九人まで集まってる。ホンマモンの役者クズレもいてるでぇ」
「九人までって・・・いったい何人登場するんでっか?」
「総勢十七人。どや? 超大作やろ」
「超大作て・・・ぜんぶ兄貴が書いたんでっか?」
「わしでもここまでは書けん。当然プロに頼んだんや」
「プロ!? 脚本書きのプロがいてるんでっか!?」
「そや。出来高の二割払いや」
「はぁー・・・奥が深いんでんなぁこの世界も」
「そや。なめたらあかん。どんな世界でもな」
「せやけど・・・」(紙をぺらぺらめくりながら)
「なんや」
「弁護士、医者、警察官・・・までは分かるんですけど」
「登場人物がどないした」
「この・・・イラン人Aとか・・・アフガン人Bとかいうの・・・なんですのん?」
「気がついたか」(得意満面)
「気がついたかて・・・」
「アルカイダや」
「アルカイダぁ? それって・・・」
「そや。ブッシュもビビるあの有名な国際テロ組織や」
「そのアルカイダが出てくるんでっか!?」
「そや。カーチェイスもあるでぇ」
「カーチェイス!」
「もっとも効果音だけやけどな。予算の都合上」
「はぁぁ・・・」
「どや。B級Vシネマなみやろが」
「Vシネマどころか・・・ハリウッドなみでんな」
「そやろが。こんだけ気合入っとったら騙される方も本望ちゅなもんやで」
「本望て・・・ところで自分は何を・・・」
「心配せんでええター公。ワレはチョイ役、この"誘拐目撃者B"や」
「誘拐目撃者B?」
「そや。カモの肉親がアルカイダにヘリで誘拐されるシーンを血相変えてまくし立てる役や。おっちょこちょいのワレにはぴったりやろ」
「ヘリで誘拐・・・でっか」
「たったの七行でも気張って練習しときや。マーカー引いてるさかい」
「はぁ・・・」
「合同練習とリハーサルはあさって。本番決行はその翌日や」
「なんや・・・いっぱしのプロデューサみたいでんな兄貴」
「そや。詐欺もプロデュースの時代に入ったんや」
兄貴プロデュース・ター公出演の記念すべき振り込め詐欺第一作。
しかし指定口座に振り込まれていたのは総額たったの三千円。
中には丁重な礼状メールまで送ってきた者もいたという。
"続編ができたら是非またTELしてください。楽しみにしてます"