商売9
「どや、調子は」
「あ、兄貴ぃ。こんなもんでどないです?」
モニタを覗き込む兄貴、頷きながら
「ええやないけ。ほなら後は広告スパムばら撒くだけやな」
「せやけど、あっさり立ち上がるもんでんなぁ出会い系サイトって」
「まぁな。裏で出回ってる開業パックのおかげや。サーバ借りてサクラ雇えば後はオールインワンやさけの」
「で、兄貴のほうはどないです? サクラの面接」
「ぼちぼちやな。ま、あんなもんやろ」
「そやけどおばちゃんばっかりでしたなぁ。だいじょうぶでっか?」
「アホ! おばちゃんをナメたらあかんど。ポイント売り上げのほとんどは、ああいうおばちゃんが叩き出しとるんや」
「ほんまでっか?」
「現物さえ見せんかったら変幻自在や。相手次第でどんな女にでも化けよる。やっぱ人生経験がモノ言う業界やさけな」
「人生経験・・・でっか」
「そや。一度に五十人まで相手できますゆう猛者までおりよったで」
「ご、五十人!・・・ばりばりのプロでんなぁ」
「そや。どんな業界にもプロがおるんや。筋金入りのな」
「せやけど男までいてはりましたな」
「ああ、ネカマか。ネット上の女の1/3はああいうネカマが占めとるんや。これまた侮れん存在や」
「はぁーーーやっぱ奥が深いンでんなぁネットは」
「ボケッ! 感心してんと早よ考えんかい! 広告スパム」
「広告スパムでっか・・・件名だけなら・・・」
「言うてみんかい」
「私の処女をもらってください」
「ボツ」
「今夜の快楽のために」
「ボツ」
「ぜーんぶタダだよ」
「ボツ」
「美香さんからメールが届きました」
「ボツ」
「ひさびさ尺八」
「ボツ!」
「乱交パーティのお知らせ」
「ポツ!!」
「いつものSEXに飽きていませんか?」
そこで深いため息をつき首を振り振り兄貴
「どれもこれも・・・いかにもって感じやなぁ・・・そう思わへんかター公」
「はぁ・・・」
「せいぜいザーメン貯めまくったエロガキぐらいしか引っかからんで」
「それにメール開いてもらう前にフィルターに引っかかって速攻で削除されるンが落ちや」
「そうでっか・・・」
「ええかター公。出会い系サイトは宣伝広告が命なんや。わかってるか?」
「大手から中小まで今や乱立状態なんやこの業界は。それも中身は同じシステム使いまわしてるだけの似たり寄ったりのサイトがほとんどや」
「そん中で売り上げ伸ばすんは、いかにぎょうさんカモを引っ張ってこれるかにかかっとるんや」
「ほんなら・・・どないしろって・・・」
「件名は一言、田中です。これにしとき」
「田中です? ・・・それだけでっか?」
「鈴木です、でもええで。ほんで中身は"例のサイトです"とリンク一本。それで十分や」
「・・・・」
「田中と鈴木は日本で一番多い姓や。それぐらい知っとるやろ」
「なぁーーるほど。勘違いでメール開かせ何やろでクリックさせる訳でんな」
「そや。やっと気づいたか」
「さすが兄貴。めちゃセコイでんなぁ」
「ドアホッ! 人生経験と言わんかい」
兄貴の妙案で着実に売り上げを伸ばしていく出会い系サイト"J-WALK"
が、サイトを管理していたター公が兄貴の雇ったサクラに引っかかり、売り上げ全てをポイント消費してしまったのは言うまでもない。