キラッと父さん4
深夜。
二階の寝室。
ベッドの上でうつ伏せに横たわる妻。
うっとりとあえぐように
「あ・・・そこ・・・」
パンパンに膨れ上がったそのふくらはぎをせっせと揉みほぐす夫。
「また足が太くなったんじゃないか?お前」
「誰のせいだと思ってんのよ!」
ふてくされたようにタバコに火をつけながら妻
「一日八時間立ちっ放しなんだから・・・パートも楽じゃないのよ」
「すまないなぁ・・・」
今度は、腰の辺りをうんうんと指圧しながら夫
「この俺がふがいないばっかりに」
「ほんとにそう思ってんなら少しは稼いで来たらどうなのよ!」
思わず語気が荒くなる妻
「バイトでも何でも仕事ぐらい見つけてこれるでしょ!」
「そうは言ってもなぁ・・・」
語尾を濁しながらも夫、今度はせっせと妻の大きな臀部をもみしだく。
と、ふと気がついたように妻
「ところで詩織は? ・・・まだ帰ってないの?」
「それがあまり見かけないんだ最近」
「え?・・・見かけないって・・・」
「塾にも学校にも行ってないらしい」
ガバッと身を起こす妻。
「いないの? 詩織」
あっさりと頷きながら夫
「家出だろう・・・たぶん」
「バカッ!」
たちまち夫をベッドから蹴り落として妻
「どうしてもっと早く言わないのよ! そんな大事なこと」
そして矢継ぎ早に問いかける
「いつからいないの?!」
「携帯は!? メールも来ないの?」
「心当たりは?」
が、夫はのほほんと首を振るばかりであった。
それが却って妻の不安にイライラの炎を添えた。
「どうしてそんな悠長に構えていられるのよ!」
「娘が心配じゃないの!? 外じゃ子どもが何人も誘拐されてるのよ!」
「あの子にもしものことがあったら・・・」
しかし夫、どこ吹く風といった様子で
「だいじょうぶ。あいつももう子どもじゃないんだし」
「それに万が一何かあったとしてもだ・・・」
ごそごそと一枚の書類を取り出し妻に手渡した。
「こうしてちゃんと・・・な?」
自信たっぷりに妻の顔を覗き込む夫。
が、書類を持つ妻の手はこのとき既にプルプル震え始めていた。
ドグワガラゴシャン!!
二階の窓を突き破って屋根伝いに転げ落ちてくる夫。
青アザに顔をしかめイタタと立ち上がる彼の頭上では
「どーゆー神経してるの!?」
鬼のような形相で二階から睨みつける妻。
「娘に生命保険かけて、いったいどうしようっていうのよっ!!」
それを聞いてハッとなる夫。
「そうか・・・やっぱそうだよなぁ・・・」
ボリボリ頭をかきながら
「今やこの家の大黒柱はお前だもんなぁ」
「お前に万が一のことがあったらずっと大変だもんなぁ」
それでもすぐに気を取り直し
「わかった! 明日にでもお前の分も契約しとくからな!」
玄関からダダダと階段を駆け上っていく。
「5000万のやつでいいかぁ? でも二人分となると月々の掛金もバカにならないぞぉ! 聞いてるかぁ!?幸子ぉ!!」
北朝鮮。
首都平壌。
総書記執務室。
「え? 弾道ミサイル?」
「はっ!」
「ほんとにぃ? あの日本がぁ?」
「はっ! 沿岸部の漁民数人も確かに流れ星のような光を目撃したと」
「だったら流れ星じゃないの?」
「それが、人民軍レーダーの記録によれば日本の領土内から打ち上げられたとしか考えられない軌跡を残しておりまして・・・」
「もちろん打ち落としたんだよね? テポドンで」
「それが、なぜか途中で消えてしまいまして・・・新型ミサイルの可能性も・・・」
「ふぅん・・・やるじゃん日本も」
「ポチのくせにいい度胸してるよね。ブッシュの飼い犬にしては」
「で・・・いかがいたしましょう将軍閣下」
「もちろん借りは返さないとね」
「はっ!」
「どのくらいがいいかなぁ?」
「は?・・・」
「テポドン二発ぐらいかなぁ・・・倍返しって言うからね。どう思う局長」
「は・・・」
「いっそ核ブチ込んじゃおうか東京に。先に仕掛けてきたのは向うなんだしさぁ」
「い・・・いきなりそれは・・・いかがなものかと・・・」
「やっぱりぃ? ちぇっ!・・・いっそどっかに着弾して五六人死んでくれればよかったのにねぇ」
「・・・・」
「ま、いいや。じゃテポドン二発、きっちり準備しといてね。明日の朝までに」
「はっ! かしこまりました将軍閣下!」
「分かってるだろうけどボタン押すのはボクだからね。勝手に押しちゃだめだよ。ボクの趣味なんだから」
「はっ! 十分に心得ております将軍閣下」
「じゃあボク寝るわ。おやすみぃ」
「はっ! おやすみなさいませ将軍閣下」
「あれ? ・・・見て見て局長。ほら、ボクのあそこもテポドンになってるぅ」
「・・・・」
「久々に少し興奮しちゃったみたい」
「では、ただちに喜び組を・・・」
「うん。そうしてくれると嬉しいなボク」