キラッと父さん5
「はぁ・・・わかりました」
ガッグリと受話器を置く男。
「ダメだったの?」
諦め顔で問いかける妻。
「今度こそはと思ったんだけどなぁ」
「・・・・」
「面接までいったのになぁ」
「・・・・」
「何がダメだったのかなぁ」
「誠意が足りなかったのよ!」
ぴしゃりと決め付ける妻。
「そもそもいまどき何の特技も無い五十男を雇ってくれる会社なんてまず、あるもんじゃないのよ!」
「面接してくれるだけで宝くじに当たったようなもんなのよ!」
「それをアンタはみすみす・・・泣きついてでも土下座してでも雇ってもらおうって根性ないの?」
「どうせ面接でもアホ面丸出しでふんぞり返ってたんでしょ」
「ナニ言ってんだ! 何でもやります、何でもやらせますからって必死で頼み込んだんだぜ」
「・・・何でもやらせます? ナニそれ」
「いやその・・・ほら・・・俺ってハンデあるじゃん。歳くってるしこれといったキャリアもないし・・・」
「だから?」
「だからその・・・普通じゃまず雇ってくれないだろ? なにか余禄でも付いてなきゃ」
「余禄?」
ピクリと吊り上る妻の方眉。
「そうおまけ・・・つまり俺一人じゃなくお前もセットで売り込んだんだ」
「下着姿の写真も見せてな。ほら、魚心あれば水心っていうだろ?」
「どうせ面接員はみんな男だろうし、中には物好きなのもいるかもしれないと・・・」
が、すでに妻の額にむくむくと二本の太い青筋が隆起していた。
ドグワガラゴシャン!!
二階の窓を突き破って屋根伝いに転げ落ちてくる夫。
青アザに顔をしかめイタタと立ち上がる彼の頭上では
「なんてことするの! この外道!!」
鬼のような形相で二階から睨みつける妻。
「自分の女房を餌に・・・信じられない!!」
それを聞いてハッとなる夫。
「そうか・・・やっぱそうだよなぁ・・・」
ボリボリ頭をかきながら
「お前じゃ無理があるよなぁどう見ても」
それでもすぐに気を取り直し
「じゃあ詩織ならどうだ?」
玄関からダダダと階段を駆け上っていく。
「娘の詩織なら気に入ってくれる面接員がいるんじゃないか? こんどから詩織の写真も持ってくかぁ?! なぁ聞いてるか幸子ぉ!!」
「たーまやーーっ!!」
「ナニそれ」
問いかける子供。
「これはな、花火が打ち上げられたときの掛け声で昔から・・・」
そう言いつつも、ふといぶかしがるお爺さん。
「はて・・・開かんな・・・・どうなっとるんじゃ?」
「不発だったんじゃない?」
「そうかの・・・それとも予行演習かな・・・」
「でもなんか聞こえたよ。悲鳴みたいな・・・」
「そうか? わしゃ耳がとおなって・・・」
「なんでもいいから急ごうよお爺ちゃん。もう始まっちゃうよ花火大会!」
「おお、そうじゃったそうじゃった」
と、孫に手を取られ急ぎ足で近所のグラウンドに向かうお爺ちゃんでした。