夏休み4
待ちに待ったその日。
父さんが見つけた穴場のキャンプ場。
エメラルドグリーンの清流に広々とした川原。
吹き渡る谷風にざわめくうっそうとした周囲の木立。
「わーーーっ!!」
車を降りるや男の子が川辺に駆け出します。
「待ってよお兄ちゃん!!」
麦藁帽子をかぶるのももどかしく妹が後を追います。
ウォンウォンウォン!!
飼い犬のパスカルも負けじとダッシュ。
が・・・
「先にテントを張るぞ!!」
父親が厳しく二人を呼び戻します。
「食事の準備もしなくちゃね」
母親も優しく二人に笑いかけます。
そう。まずは仕事の時間。お遊びはそれからです。
でも幼い二人にはテント張りも飯盒炊飯もすべてがわくわくする初体験です。
石の川原にシートを張って杭を打ちつけロープを張ります。
幼い二人は父親の指示であっちを持ったりこっちを引っ張ったり訳も分からず大忙しです。
でもあら不思議、ものの三十分ほどで黄色いドームテントがしっかりと立ち上がり、二人は自分たちの初仕事に惚れ惚れと目を丸くします。
「次は薪を拾ってくるんだ」
既に手ごろな石で石窯を組み始めていた父親が次なる指示を出します。
「乾いたやつだ」
仕事はまだまだありそうな気配。
でも二人は元気いっぱいに駆け出します。
川原のあちこちに落ちている流木を次々と拾っていきます。
パスカルも尻尾を振って駆け回り、先に流木を見つけてはくんくんやっています。
妹が持ちきれなくなるとその分も兄が抱え込み、ほとんど前が見えなくなるまでがばります。
そして小一時間後・・・
「もうじゅうぶんだ」
山積みになった薪を前に泥だらけの汗をぬぐう二人を父親が満面の笑みでねぎらいます。
「がんばったな二人とも」
既に一人前の働き手として二人を認めてくれているねぎらいの笑みです。
その嬉しさと充実感が二人の頬を紅潮させ鼻腔まで膨らませます。
それもそのはずどこからかカレーの匂いが漂ってきます。
「そろそろ今日のおかず、お願いね」
石窯の隣で野菜を刻んでいた母さんがにっこり声をかけます。
二人のお腹が同時にぎゅるると鳴り出します。
「よし。釣ってくるか」
おもむろに父親が車の後ろから釣竿を取り出します。
「僕も釣る!」「あたしも!!」
父親の釣竿にまとわりつく二人。
ウォンウォンウォン!!
そんな二人にまとわり付くようにパスカルも駆け出します。
夕飯はカレーと川魚のようです。もちろんうまく釣れたらの話ですが。
でも父親は既に満足げに雲ひとつない空に目を細めて心地よい汗をぬぐいます。
今夜は、都会ではとても拝めないとびっきりの星空も二人に見せてやれそうです。
八月二十日 はれ
キャンプじょうでいもうとがいなくなった。
とうさんとつりをしているときだった。
かわぞこにしずんでいた。