ボクは将軍様5
「どう? 重油手に入りそう?」
「はっ! "南"から既に5万トン、アメリカ・中国からも今月中には・・・」
「そ。よかった。石油がなくちゃ話にならないもんね」
「は。まことにもって」
「これでピョンヤンだけでもまた明るくできるね」
「は・・・」
「君、NASAの衛星写真見たことある? 夜のやつ」
「は?・・・」
「日本や韓国は夜でもあちこち輝いてるのに、ボクの国だけどこも真っ暗なんだよ」
「まるで誰も人が住んでいない砂漠か荒野みたいにさぁ・・・」
「アレ見てボク、情けなくて涙が出てきちゃったよホント」
「は・・・まことにもって」
「パパが死んだときですら涙一つ見せなかったこのボクがだよ!」
「は!」
「先の洪水で数千人が死んだときもモンティ・パイソン見て笑い転げてたこのボクがだよ!」
「は・・・」
「コレってもの凄っく悲しいことじゃないかな」
「は。まことにもって・・・」
「パパとボクが一生懸命導いてきたこの国っていったい何なのっ!?」
「そ・・それは・・・」
「・・って叫び出したくなるよね」
「いえ・・・そんなことは・・・」
「無理しないでいいよ。君には絶対分からないから。ボクの孤独と悲しみは」
「は・・・」
「その点いいよね日本なんかの首相はさ。好きなときにいつでも辞められてさ」
「は。まったくもって」
「ホント選挙に負けたぐらいでウルウルしちゃってさぁ」
「ボクなんか何万人飢え死にさせようが辞めろって言ってくれる人すらいないんだからね」
「ボクの可愛い人民が飢餓と洪水でバタバタ死んでいくのを尻目に平然と豪奢なハレムで酒池肉林の毎日なボク・・・どうよコレ」
「は・・どうよコレ・・・と言われましても・・・」
「この気の遠くなるような孤独と悲しみの深さ・・・・君たち凡人には想像もつかないだろうね」
「でもいいんだ。これがボクの生まれついた宿命なんだ。わかってるさ」
「ボクは一生これを背負っていかなければならないんだ」
「は・・・」
「ごめんね書記長。愚痴なんかこぼして」
「そんな、めっそうもない!!」
「ボクも人の子だからね。たまには弱気になることもあるんだ」
「は」
「で・・・核開発進んでる?」
「は! すでに核弾頭二十発分のプルトニウムを抽出し終えています」
「そ。濃縮ウランの方も急いでね」
「は! 承知しております」
「それからくれぐれも査察団には悟られないようにね」
「は! ご心配なく。査察団は今のところニョンビョンのダミーに釘付けで『駄目だよ油断しちゃ!」
「核開発はこの国の生命線、唯一の金のなる木なんだから」
「見つかったら君の首100個でもすまないよ」
「うははぁ!!」
「じゃ・・・ボク寝るから」
「はっ!」
「重油も届いたことだし明るくしといてね。暗いの嫌いだからボク」
「は?」
「ピョンヤンだよ!! 電力制限解除するの! ホント鈍いんだから」
「二度と衛星写真でボクを泣かさないでね」