へそ曲がり4



 えーーー。
 あのへそ曲がり、その後どうなったんでしょうな。
 熊と格闘しても死にきれず、逆にそれが幸いして一人娘の河馬子と再会できたあのへそ曲がりです。
 でも今日はその河馬子がある人に会ってほしいということで朝からそわそわと落ち着きのないへそ曲がりです
 ノーベル賞をとるほどの才媛とはいえ河馬子もそろそろ妙齢の年頃・・・どうやら男ができてしまったようなのです。
 もちろん"お嬢さんを私にください"などとほざいで突っ伏すようなありきたりの輩は、即蹴りを入れて有無を言わさず叩き出してしまう腹積もりで今か今かと待ち構えています・・・が
 ずかずかと入り込んできた男は

 「河馬子さんのお父さんですね」

 と問いただすや否やいきなり

  夏至っ!!

 とへそ曲がりを蹴り倒してしまいます。
 さらに馬乗りになってへそ曲がりの襟首をつかみ

 「河馬子さんを私にください!」

 と叫ぶや今度は"頭突き"の雨あられです。

  ゴッ!ガッ!ゴッ!ガッ!

 「どうか河馬子さんを私にください!」

 これにはさすがのへそ曲がりも度肝を抜かれます。

  "なんなんだこの男は!"

 重い頭突きの集中連打に意識が朦朧となる中、必死に反撃のチャンスをうかがいますが

 「なんてことするのっ!!」 

 割って入った河馬子が男を引き剥がすや

  スパーン!!

 思いっきりその頬を張ります。

 「お父様にこんなことして・・・こんなことして・・・」

 その目からぶわっと涙があふれます。

 「見損なったわ春樹さん!!」

 ようやく我に返ったようにハッとなる男。
 へそ曲がりに向き直りガバッと畳に手を付くや 

 「申し訳ありませんでした!!」

 額を畳に擦り付けます。

 「お父さんのこと河馬子さんからさんざん聞かされてて・・・」

 「とても普通じゃだめだと・・・でもどうしていいか分からなくって・・・頭の中が真っ白になって」

 しかしむっくりと起き上るへそ曲がり。

 「なるほど」

 額から血を滴らせながらも
 その口元には不敵な笑みがへばりついています。

 「なかなか正直な若者じゃないか」

 「それに今時、結婚相手の父親にいきなり頭突きをかますような・・・」

 そう言いいながらも後ろ手に床の間の木刀をまさぐります。
 この日のためにわざわざ武具店から仕入れてきた得物です。

 「そんな骨のある男はそうそういるもんじゃ・・・」

  ビュッ!!

 いきなり振り下ろされる木刀。
 が、すかさず放たれる見事なクロスカウンター。

  護符っ!!

 折れた前歯が宙に舞い鼻血を噴き上げながらのけぞるへそ曲がり。
 そして、どうっと仰向けに倒れてから五秒、遠のく意識の中
 へそ曲がりは最後に一言、満足げにこう言ったそうです。

 「結婚を許す」

 と。