商売14
「格差社会到来か・・・」
「なんや、めずらしゅう新聞なんか読んでんのかター公」
「あ、兄貴ぃ。これでも江戸川経済新聞の勧誘員ですさかい」
「まだそんなしょむないバイトやってんのか。本業に精ぇ出さんかい!」
「へぇすんまへん」
「・・・と言いたいところやが社会情勢を勉強するのはええことや」
「そ、そうでっしゃろ」
「そや。詐欺も世に連れ世も詐欺に連れ・・・ちゅうてな。詐欺師もその時代時代に合わせてバージョンアップせな生き残れんど」
「バージョンアップ・・・でっか」
「そや。しょうみ格差社会やったら格差社会に最適化された詐欺をあみださなあかん」
「最適化・・・でっか」
「そや。これからはえげつない二極化の時代や。札びらでケツ拭きまくる金持ちとケツの毛までむしられる貧乏人しかおらん時代になるんや」
「かぁぁーー! ほんまえげつないでんなぁ」
「そやろが。そやったらワシらはどっちを狙うべきや?」
「そらぁもちろん札びらでケツ拭いてる方でっしゃろ」
「ドアホッ! そやからワレはいつまでたっても皮かむりなんや」
「せやけどケツの毛までむしられた連中から銭取れるんでっか?」
「ボケッ! 貧乏人にはローン組ませりゃええんや。そもそも札びらでケツ拭いてるような連中はちんけな儲け話なんか鼻も引っ掛けへんど」
「言われてみれば確かにそうでんな」
「連中騙そう思たらごっつい仕掛けが必要や。それこそ"スパイ大作戦"並みのな」
「はぁぁーーわしらにはとうてい無理でんな」
「そやろが。そやさけワシらは"スパイ小作戦"に甘んじて貧乏人にこれを売りつけるんや」
「スパイ小作戦!?・・・なんでっかソレ」
「株券や。十株100万円。もちろんパチモンやけどな」
「そら無理でっせ。貧乏人がローン組んでまで100万も・・・それに世界同時株安ぐらいその辺の猫でも知ってまんで」
「ダボッ! そこが詐欺師の腕の見せ所のスパイ小作戦なんや」
「へへへ・・・なんやそのネーミング・・・入れ込んでまんなぁ兄貴」
「ネーミングだけやないでぇ。久々の大仕事や。新聞広告も出すし事務所も借りて看板も出す。人も臨時で十人ほど雇うさけな」
「はぁぁ・・・おもいきりはりましたな兄貴。せやけどそんな銭ありましたんか?」
「細かいことは気にせんでええ。ワシは代表取締役社長でター公、ワレは取締役人事部長や」
「取締役人事部長!!」
「そや。ほんで事務所で面接するんや。正社員募集で応募してきた連中をな」
「へ? 会社作るんでっか?」
「ドアホッ! ほんまに会社作ったらスパイ小作戦とちゃうやろが! 全部見せ掛けだけや」
「・・・ほんでどないするんです?」
「もっともらしい顔してもっともらしい質問しとったらええ」
「応募してきたカモは条件付で全員採用や。その通知に従業員持株制度の案内を同封するのがミソや」
「従業員持株制度?」
「採用されたもんは否応なしに会社の株を購入させられるっちゅう仕組みや」
「はぁぁ・・・えろう勉強してまんな兄貴」
「ほんまは任意やけどな。正社員になりたい一心が連中の弱みや」
「なぁるほど。非正規労働でケツの毛までむしられとる連中の目の前に正社員ちゅう餌ぶら下げてパチモンの株買わせる算段でんな」
「やっとのみこめたかター公」
「ほんまにスパイ小作戦でんな。なんやワシ、久々にわくわくしてきましたわ」
「そやろが。ワシらもここらで一発逆転の大勝負や」
「ほんでケツの毛までむしられる側から札びらでケツ拭く側に大ジャンプでんな」
「そや。そやさけター公、ワレも年中一張羅のその小汚いジャージほかしてスーツぐらいバリッと新調せんかい。取締役人事部長にふさわしいバーバリーぐらいな」
「せやけどそんな金・・・どこ探したって・・・」
「ボケッ! ローン組まんかい!」
江戸川ミライズ商事・・・
その正社員募集の三行広告に応募してきたのが二十六名。
そのうちローン地獄に陥った者約三名。もちろん兄貴とター公を除いた人数である。