キラッと父さん6



 夜。
 二階の娘の部屋。

 「ねぇ・・・」

 改まって問いかける娘。

 「どうして父さんなんかと結婚したの?」

 「・・・・若かったのよ」

 フッと笑って母親。

 「でも、あんな甲斐性なしだと分かったときには後の祭り」

 それから真顔になって

 「だからアンタは絶対つまんない男に引っかかっちゃダメよ」

 その時いきなりドアが開き

 「そうだぞ詩織!!」  

 ずかずか入ってくる男。

 「お前は何が何でも金持ちの男をひっかけて結婚するんだ!」

 「そしてうちに金を入れて家計を助けるんだ!」

 妻と娘のあからさまな侮蔑のまなざし。 

 「ナニ言ってるのアンタ!」

 「立ち聞きしてたの父さん!?」

 それを気にかけるでもなく男、独り頷きながら

 「それにはなんてったって女の武器だ」

 「幸子に似てあいにく顔はいまいちだが詩織、お前の体はなかなかのもんだぞ」

 そう言っていきなり娘の胸をもみしだき

 「乳もでかいし」

 素早く下半身にも手を伸ばす。

 「ん! 尻の形と肉付きも申し分なしだ!」

 唖然と口を開けたまま声も上げられない娘。

 「これなら十分、どんな男でもとりこに出来るぞ」

 もちろん、すでに妻の額にはむくむくと二本の太い青筋が隆起していた。

  ドグワガラゴシャン!!

 二階の窓を突き破って屋根伝いに転げ落ちてくる夫。
 青アザに顔をしかめイタタと立ち上がる彼の頭上では

 「なんてことするの! この変態!!」

 鬼のような形相で二階から睨みつける妻。 

 「自分の娘に・・・・信じらんない!!」

 それを聞いてハッとなる夫。

 「そうか・・・やいてるんだな幸子・・・」

 ボリボリ頭をかきながら

 「確かにあっちの方もずいぶんご無沙汰だもんなぁ」

 それでもすぐに気を取り直し

 「よし! 久々に1ラウンドいってみるか!」

 既にズポンのベルトに手をかけ玄関からドドドと階段を駆け上っていく。

 「待ってろよ幸子! 今からたっぷりかわいがってやるからな!」









 同時刻。

 「Hey Waka・・・」

 太平洋上空226キロ、スペースシャトル内。

 "It appears Japan has just failed to launch satellite again."
 (日本はまたも衛星打ち上げに失敗したようだ)

 窓から地表を眺めていた非番のブライアン少尉が沈鬱な声を上げた。

 "Oh my God!"

 "That's too bad!"

 "I'm so sorry."

 他の乗組員からも次々に上がる悲嘆の声。

 "Never mind. It's OK guys"(気にしないでみんな)

 独り努めて明るく切り返す若田光一。 

 "My country will never give it up, like us."
 (日本は決してくじけないから、僕らのようにね)  

 たちまち湧き上がる賛同の嵐。

 "That's it!"(そのとおり!)

 "That's the spirit!"(その意気だ!)

 "Samurai spirit! Right?"(侍魂ね!) 

 が、その後

 「でも確か・・・」

 ひとり首を傾げる若田光一であった。

 「衛星打ち上げは来年の春じゃなかったっけ?・・・」