キラッと父さん7



 夜。
 二階の寝室。

 「ひどいわねぇ」

 TVニュースを見ながら呟く妻。

 「宝くじのお金目当てに女を殺すなんて」

 「ほんとだなぁ」

 頷きながら相槌を打つ夫。

 「男の風上にも置けんやつだ」

 「でも・・・」

 ふと思わせぶりに妻。

 「もしあたしが二億円当たったら、あんたどうする?」

 「ホントかっ!!」

 そう叫ぶなりドドッと部屋を飛び出す夫。
 そしてドドドと再び部屋に駆け込んできた時

 「なにそれ」

 その手に握られていたのは

 「なんなの? それ」

 太いロープであった。

 「それでどうするの?」

 三度聞き返す妻の手にも既に出刃包丁がギラリ。

 「いや・・・これは・・・・だから」

 「だからそのロープでどうするのって聞いてるの」

 刺すような妻の視線と出刃包丁に怖気づき
 観念したように夫、ハハハと笑ってごまかしながら

 「ホラ、お前の首って異様に太いだろ? だから手が回らないんじゃないかと思ってさぁ」


  ドグワガラゴシャン!!


 二階の窓を突き破って屋根伝いに転げ落ちてくる夫。
 青アザに顔をしかめイタタと立ち上がる彼の頭上では

 「なに考えてんのっ!! この人でなし!!」

 鬼のような形相で二階から睨みつける妻。 

 「まさかとはおもったけど・・・・信じらんない!!」

 「それに誰も本当に宝くじが当たったなんて言ってないでしょ!!」

 「ホント早とちりなんだから!!」

 それを聞いてハッとなる夫。

 「そうか・・・まだ隠し場所もきいてなかったもんなぁ・・・」

 ボリボリ頭をかきながら

 「それに、まだお前の穴も掘ってないもんなぁ」

 それでもすぐに気を取り直し

 「よーし。待ってろよ幸子!」

 猛然とシャベルで庭に穴を掘り始める夫。
 そして30分後。ゼイゼイ額の汗をぬぐいながらも 

 「よし出来た! 埋める穴もちゃんと作ってやったぞ幸子!」

 そしてシャベルを放り出すや

 「だからどこだ? どこに隠したんだ幸子!!」   

 玄関からドドドと二階に駆け上っていく夫。

 「おーい聞いてるか幸子! 二億円だよ二億円!! 二億円どこに隠したんだ!?」






 「あ! 流れ星!!」

 「な。言ったとおりじゃろ」

 縁側で夜空を指差す子供と微笑む老人。

 「でも・・・なんか人の悲鳴も聞こえたよ」

 「そうか? 気のせいじゃろ」

 「でも・・・どうしてお隣の窓ガラスが割れると流れ星がふるの?」

 無心で聞き返すつぶらな瞳。

 「それはじゃな・・・長年の経験と勘じゃ」

 「ケイケンとカン?」

 「そうじゃ。お前も年を取れば分かる」

 「へぇぇ。すごいんだ」

 「ほっほっほっ・・・」

 目を細めゆっくりと渋茶をすする老人と、不思議そうにそれを仰ぎ見る孫の姿がありました。