商売16
「かぁぁぁぁ!!」
「また何イキッてんのやター公」
「イキりまんがな兄貴ぃ。引きずったまま3キロでっせ!」
「あぁ、あの大阪梅田のひき逃げ事件か」
「おまけにその後もけろっとホストに転進してたそうやないですか」
「まぁひかれた相手が悪すぎたな。殺されたら金もとれんしのぉ」
「・・・ナニ言うてはるんでっか?」
「どや、ワレもちょこっとひかれてみぃへんかター公」
「へ?・・・」
「心配せんでええ。わざと当たって金とるだけや」
「ああ・・・当たり屋でっか」
「そや。一回で二、三十万はかたいど」
「せやけど・・・」
「だいじょうぶや。梅田のような外道に当たらんようディズニーランド辺りの家族連れ専門に狙うさけな」
「・・・・」
「パーキングエリアで発車したての車のサイドミラーにちょこっと腕当てるだけでええんや。後はワシに任しとき。なんとでも因縁つけて『すんまへん兄貴! 今回だけは勘弁してください!」
ガバッと両手をつくター公。
「もぅワシ、危ない橋渡りとないんですわ」
「危ない橋ぃ?・・・」
見る見る真っ赤になる兄貴。
「ドアホッ! 詐欺師が危ない橋渡らんでどないするんや!」
「せやけど・・・もし捕まったら・・・」
必死で額を畳に擦り付けるター公。
その様子にしばし無言の兄貴。
すっと小指を突き出して
「・・・コレか?」
「・・・・」
「コレが出来たんやなター公」
「へへ・・・へへへ・・・」
とたんに相好を崩して顔を上げるター公。
「さすがぁ兄貴。分かりまっか」
「わからいでか。どうも最近、やけに堅気臭うなったと思とったら・・・」
「へへへ・・・えらいすんまへん」
「で・・・どこのスケや」
「へへ・・・販売店のお嬢さんですわ」
「販売店て、ワレが勧誘員やってるいう江戸川・・・『江戸川経済新聞です」
「ええ子なんですわ。ちょっと気が強いのが玉に瑕やけど、今度兄貴にも紹介『で、いくらぐらいカモれそうや?」
「カモるて・・・そんな・・・わしあの子とは本気で『ボケッ!!」
「自分のスケさえコマせんようでは詐欺師失格やど!」
「せやけど・・・」
もじもじと煮え切らないター公。
「せやけど・・・ワシ・・・初めて本気で・・・」
その様子に兄貴
「ようわかった」
あっさりと
「所帯もって堅気になり」
「へ?・・・」
「ワシとの縁もコレっきりや」
「そんな・・・兄貴ぃ・・・」
「その方がええ。ワレはもともとこの商売には向いてなかったんや」
すっと立ち上がる兄貴。
「ター公・・・」
その背中でぼそっと一言。
「たっしゃでな」
たちまちその足にしがみつくター公。
「待ってください! 兄貴ぃ!」
「兄貴に見放されたらワシ・・・ワシ・・・」
半泣きで言葉を振り絞る。
「この世でたった一人の・・・実の兄とまで思てこれまでワシ・・・」
それでも兄貴、背を向けたまま。
「堅気とは相容れん世界なんや」
「スケをとるかワシを取るか、おのれで決めるしかないんや」
そして一週間後。
例の六畳一間のアパート。
神妙な面持ちで正座するター公。
「50万か・・・」
その前では悠然と札びらを数えながら兄貴。
「やればでけるやないかター公」
「せやけど、どない言うてせしめたんやこの金」
それには答えず
「一生のお願いです兄貴ぃ!」
またもガバッと両手をつくター公。
「彼女をカモるんはコレっきりにしてください」
「なんや・・・カモッたんはワレやないか。ワシとちゃうでぇ」
「そ・・・そんなぁ・・・」
「それにカモれるカモはしゃぶりつくす。それが詐欺の鉄則やろが」
「せやけどワシ・・・彼女とは本気で・・・」
「なんやワレ、まだそんなねむたいこと言うてんのか。ケツまくって心きめたんと『バタン!!
いきなりドアが開いてずかずか踏み込んでくる若い女。
「やっぱりね」
二人の前に仁王立ち
「サッちゃん!!」
真っ青で驚きうろたえるター公。
かまわず二人の間に割り込むようにして女。
「来てよかったわ」
「こんなことじゃないかと思ったんだ。あたし」
「ター君人がいいから、悪い友達に脅されてるんじゃないかって」
勝気な目でギリリと兄貴を睨みつける。
まん丸目でぽかんと口を開けたまま言葉も見つからない兄貴。
はてさて・・・どうなることやら・・・・・・・・・・・・・・・